ぶんぶんと言ってくれないから

 今朝、いつものように朝の支度を終え、仕事用の制服に着替えた。

 最後、ベルトを締めようとしたところで、制服の上着、背中の腰のベルトの辺りに何か入っているような違和感を感じた。

 数秒すると、針で刺されたような鋭い痛みが。

 ああ、やってしまったか、本能的にわかった。ハチである。

 最初は「ちくん」としただけだったが、だんだんと痛みが大きくなってきた。制服越しに触ってみると、やはり中で何か動いているものがある。

 前にも何度かあったのだが、その際は我が家の藤の花に毎年春やってくるクマバチで、彼らは気が付くと「ぶーん」という羽音を出してくれるので、今までは何とか刺されずにすんでいた。制服を取り出すと「ぶーん」と言ってくれるので、すぐにわかったのだ。

 しかし今回は違う。触ってみても、ちょっと細長い。おそらく、庭で時々見かけるスズメバチだろう。

 制服から逃げ出さないように気を付けながらおそるおそる見てみると、やはりそこそこの大きさのスズメバチだった。写真など撮る余裕もなく、怖くなって、窓からすぐに外へ逃がしてあげた。

 スズメバチはぶんぶん言ってくれないので、制服の中にいた場合には全くわからない。

 どうしてこんな事になるのかと言うと、制服を洗濯をして外に干している際、ハチは黒っぽい物を敵に見立て、集まってくる習性があるので、時々制服の中に入ってしまうのである。そして、黒っぽい制服の中を自分の休息場所にしてしまうのだ。

 知らずに制服をたたみ、数日後に制服を着ようとすると、このようになってしまうのである。スズメバチの場合は、殆ど羽音がしないので、わからないのである。

 朝、出勤の20分前、ハチに刺されてしまった私。

 ちょっと見たところでは、体長3-4cmはあったかもしれない。

 刺されてしまって大丈夫なのか、心配になってきたので、まだ寝ているカミサンを起こし、報告をして、患部を確認してもらった。背中なので、自分でどうなっているのかを見ることができなかった。

 幸いにも、そんなにひどい腫れはなかった。この時既に刺されてから10分程が経過していたが、アナフィラキシーの症状もなく、ただただ刺された箇所がチクチクとズキズキと痛いだけだった。

 風呂から上がって1時間も経っていないので、患部はとりあえずは清潔である。肌着も全て洗濯後の物なので、ばい菌が入るようなことはないだろう。

 少し冷静になってからネットを検索してみたところ、刺されてすぐにアナフィラキシーの症状が出なければ、とりあえずは大丈夫とのことだった。毒ヘビに噛まれてしまった時とは違い、とりあえずコロナのワクチン同様、15分位何もなければ一安心していいらしかった。

 その後、刺されてから20分ほどが経過してもアナフィラキシーのような症状は出なかったので、少し遅くなってしまったが、いつも通りに出勤した。

 今でも刺された箇所はかなりの痛みがあるが、とりあえず、何とか仕事はできるレベルである。

 しかし、あんな小さな蜂に刺されてしまっただけで、人間はこんなにダメージを受けてしまう生き物なのだと、改めて自然の驚異を思い知らされた。

 気が張っている時はそれほど感じないが、ちょっと気が抜けると、まだまだかなりの痛みを感じる。

 コロナのワクチンで、私はかなり強く副反応が出たのだが、それがいいのか悪いのか、あの時に比べれば熱も出ないし、倦怠感もないので、いいのかもしれない。

 しかし痛いのである。

 仕事を休むわけにはいかないので、何とかがんばろう。

 みなさまもお気をつけ下さい。