オヤジとの電話と手術の報告:家族に心配をかけたくない想い

 オヤジから電話がかかってきた。

 暑いようでもあるし、朝晩は少しだけ寒い感じもするし、エアコンの設定はどうすればいいんだ? と、いつもの問い合わせだ。

 私はいつものように、暑くも寒くもないのならエアコンをつけないで様子を見ればいいし、寒ければ暖房の26度くらい、暑ければ冷房にして、これも25-6度にすればいいよ、蒸し暑くても熱中症になるから、我慢しないでエアコン点けてね、と伝えた。
 
 私の携帯が鳴ったとき、瞬間的に思った。

 今、言った方がいいかもしれない、と。

 私はこの症状を、どのように説明したらいいのか、いつも迷う。今回は、治療した虫歯の先っぽにばい菌が入ってしまって、顎の骨が溶けて、その膿がほっぺたに腫瘍を作って、そこから膿が出ているんだ。全身麻酔での手術で、5泊6日の入院になっちゃうんだけど、大丈夫だから心配しないでね、と伝えた。

「そうか…大変だな」

 オヤジは電話口で少し困惑していたようだったが、一言そう言った。

 そして、

「かあさんには言わない方がいいな。心配するからな」

 とも言った。

 かなり心配をかけてしまったが、こればかりは仕方ない。

 そのあと、入院期間と病院名を知らせた。

「1010、じゅうじゅうだな。わかりやすいな。」

 オヤジはいつになく元気な声でそう言った。

 私はこの間仕事ができないことから、10月の生活費が苦しくなってしまう。このような事態に備えて貯金をしておくのが「備え」なのだろうけれど、悲しいかな、今の私には備えはなく、借金だけが、かろうじて残高を減らす感じの状況だ。

 情けないとは思ったが、オヤジに生活費の10万円を都合してくれないかと頼んでみた。オヤジは毎月いくらかを返済するのを条件に快諾してくれたが、こっちも金がなくて苦しいと言っていた。

 そう言われてはさすがの私も辛いし、利息を払えばまだ借金はできるので、何とかがんばってみるけど、もしかするとお願いするかもしれない、と、返した。
 
 正直、どうするか、どうなるか、全くわからない。

 入院が6日で済み、退院翌日から働くことができれば、何とかギリギリのライン。カミサンは心配して、退院後も何があるかわからないから、休みなさい、と言う。休めばお金が足りなくなるけど、怒られる。そもそも身体がどうなるのか、全くわからない。

 とりあえず段取りではないけれど、オヤジにも説明して、どうしてもダメな場合はお願いしますと言っておいた。オヤジも銀行に行ったりという送金業務が大変なようなので、今度現金書留を買って宛名を書き、それをレターパックで送ろうと思っている。

 幸いにも実家の近くには、かろうじて郵便局が残っており、オヤジはここへなら行くことができるようだ。

 私自身のことで心配をかけてしまうのが心苦しいけれど、最悪の事態ではないので、何とかこの困難を乗り越えて、元気になって年を超す事ができればなと思っている。