日本の部屋

 大きな和室が、私のベッドルームになった。

 約40年前に造られた、畳8畳の和室。

 そぐわないかのようなセミダブルベッドがあるのと、東日本大震災時に壊れてしまい、現代風のものに取り換えられた部屋の灯りを除けば、障子の窓があり、仏壇があり、神棚もあり、日本を感じることができる、とても素敵な部屋である。

 先日カミサンと私で、義父関連のゴミ、ゴミ袋大12個ものゴミを排出し、綺麗になった。

 義父の洋服ダンスがまるまる空いたので、ここに私の服を入れることにした。ベッドの下にも収納があるので、ここには普段着る服と、パジャマを入れることにした。

 今までこんなに広い部屋で暮らしたことがないので、戸惑ってしまう。

 元来、服を出し入れするのが嫌いというか面倒くさくて、年がら年中同じ服が同じ所に置いてある生活を50年以上続けてきた。

 還暦を前にして、私に大変革が起きている。

 カミサンは暇があれば、いつも片付けをしている。元来綺麗好きなのはわかっていたが、義父と暮らしているこの家で、共有部分を片付けるのは嫌いなようだった。

 その義父が寝たきりになって介護施設に入り、どう考えてもこの家に帰ってくる可能性はなくなったので、カミサンはようやく元気を取り戻し、毎日片付けに励んでくれている。

 玄関などは、今まで、義父の殆ど使わない靴が、下駄箱の半分以上を占領していた。これらを全て処分すると、本来の下駄箱の姿となり、私たちの履き物が綺麗に収納されるようになった。

 ここは何だかよくわからなかった、スリッパ入れまでもが機能するようになり、私も今までは脱ぎっぱなしだったスリッパを、自然な形で常に収納するようになった。

 広い玄関には、靴の一足も、サンダルも、置いてはいない。全てがきちんと収納されて、必要な時に取り出して使うようになった。

 今はまだ少し寒いので、灯油のポリタンクが置いてあり、少し場所を取っているが、これがなくなれば、我が家の玄関はとても広い。

 家が綺麗になって行くのは、とても気持ちがいい。

 私も、今までは少しサボり気味だった庭の手入れを、今年はがんばらねばと思っている。

 我が家には玄関の入り口に、回りを日本庭園的な石で囲われた、小さな花壇がある。今までは私が適当に草を生やしたり、芝生を植えて枯らせたりしていたのだが、ここに来てカミサンが、花好きな友人と一緒になって、何か花を植えようかな、などと言い始めた。

 私は昨年、俗に言う「バカ」の苗を買ってきて植えてあったのだが、この草の種である「バカ」は、洗濯物を干す際に服につくようで、カミサンからは嫌われていた。

 まさかあのカミサンから、花を植えたい、などという言葉が出てくるとは思わなかったので、早速その「バカ」の草を、庭の藤棚の隣のスペースに移植した。こいつは強い雑草なので、かなり深く根を張っており、移植には苦労したが、何とか無事にあたらしい場所に移すことができた。

 というような感じで、いよいよ我が家に遅い春が訪れた。これを心から楽しむのにも、やはり大事なのは健康だ。数々の大病を克服してきたカミサンと一緒に、これから有意義な時間を過ごして行こうと思っている。