90歳の父からの送金に感謝し、人生の山あり谷ありを思う

「送っといたぞ」

 元気な声でオヤジから電話がかかってきた。

 私が顎骨骨髄炎の手術で入院する際、病院代は保険で何とかなるものの、働いて稼ぐ分のお金が足りなくなるので、オヤジに支援をお願いした。

 情けないが、生きていくためには仕方ない。

 昨日はとある箇所で工事があり、この影響で配送が遅れ、帰りが遅くなった。

 オヤジはいつも夜の7時半位に電話をかけてくるが、この日はまだトラックの中で日報を書いていた。

 オヤジは昔から、銀行や郵便局などに行くのが好きだった。

 私が産まれた頃は、一応独立して商売をしており、経理もしていたようなので、数字やお金に関しては、今でもオヤジが牛耳っているようだ。

 90歳、卒寿を超えた父が、坂の上にある商店街に行き、郵便局の受付から送金をお願いしてくれた。本当に申し訳ない。

 夜、寝る前に、インターネットで口座の残高を確認してみると、「送金 福島まるまる 100,000」 の表示が確認できた。

 大事に使わなければと思った。

 「頼りになるのは家族だけだからねぇ」

 屋久島にいる時、一緒に船に乗っていた、正信さんという人が、よくこんな事を言っていた。

 私もこの歳になってつくづくそう思う。

 同級生に、お金に困っていなさそうな友人はいるけれど、何があっても「お金を貸してくれる?」とは、言えない。こんな事を言うくらいなら、死んでしまった方がマシだ。

 恥ずかしい話になるけれど、FXとか自動売買とか資産運用とかに興味を持っていた時、親からお金を借りて、それを運用してみようかな、などと、真剣に考えていた時期があった。

 さすがに言い出すことはしなかったが、こんな事を考えていた、ということだけでも、自分が情けなくなる。

 もちろん、このお金を、勉強したFXの自動売買で運用してみよう、なんて思うことはもうない。

 何とか食いつなぎ、少しずつでも暮らしに余裕を持てるようになりたい。

 毎日考えてはいるものの、人生山あり谷ありで、なかなかどうして思うようにはならないものだ。