夫源病

 カミサンが夫源病である。

 夫がいつも家にいるようになると、妻が精神的に不安定になってしまう、という症状というか状況のことが夫源病と言われている。

 私は9月に運送会社を退職して以来、ずっと家にいる。

 当初は消費生活アドバイザーの試験を目指して勉強していたのだが、第一次試験は合格したものの、第二次試験で不合格となった。これが1月の末。

 妻は、この後私が働くと思っていた。

 しかし私は今も働かずに家にいる。

 失業保険が切れた今月初めまでは家にいようと思っていた。その後はタイミーなどを見ながら短期バイトをする予定ではいたものの、不慣れな短期バイトをしなくても、何とかなるだろうとの考えになり、今に至る。

 カミサンとすれば、朝家を出る時にも私がいるし、帰ってきてもいるし、私が歯医者に行く予定だから帰ってきたらいないと思っていたものの、歯医者が早く終わってしまって、いないであろうと思ったところにもいたり、そんなんで、どうやらストレスになっているようなのだ。

 こんな所に書くものでもないとは思うのだけれど、結構この状況はあるらしい。

 たぶん書いたとは思うけれど、実は昨年の12月にも、同様の状況で大喧嘩をしている。朝にこれまでに経験したことのないレベルの言い合いをしたあと、死ぬかもしれないと置きLINEをして、スマホも持たずに家を出た。俺のことを何だと思ってるんだ、と私は大声で彼女を罵った。

 その時彼女は夫源病という言葉を口にした。

 私は彼女への怒りが消えないまま、夜に家に戻った。妻は私を見て泣き崩れ、話し合いをして、25年間こうしてやってきたのだから、これからは何があっても話をして、二度と同じ事がないようにしよう、という事で決着した。

 当初は優しいカミサンに戻ったと思いきや、最近また顕著な言動が目立つようになってきた。

 一緒に朝食を食べていても、一言も喋らない。調子の良いときは、いろいろと話をしてくれるのだけれど、それがなく、顔つきも少しおかしい。

 昨日の夕飯は、自分は先に食べたと言って、一緒には食べず、私が食事をはじめるといつものルーティーンを崩して台所の仕事をはじめた。彼女は通常、自分のルーティーンを崩すことを極端に嫌う。

 また、今日カレンダーを見てみると、次の休みも友人と会う、と、予定が記載されている。先週も会ったばかりなのに。自分が休みの日は、おのずから私といる時間が多くなるので、敢えて外出するのだろう。

 私は洗濯物を取り込んだり、洗い物を手伝ったり、帰ってきた際の荷物が重いだろうと家の中まで運ぶのを手伝ったりと、自分なりに彼女に協力してあげようと心がけてきた。しかしこれらは今、彼女にとってストレスの源になっているようだ。

 私は経済的な面で、失業中だからと彼女に迷惑をかけたことはない。

 問題は私が家にいつもいて、お節介のような家事手伝いをしていることのようだ。

 今さら直接聞くような優しさは、もう今の私にはない。

 忘れてはならない。この25年重ねてきた結婚生活は、お互いの犠牲の上に成り立っていると言うことを。言い分はお互いにあるということを。

 「何でうちは、子供もいないし、実家暮らしだし、二人で働いているのに、新しい車が買えないの? 今の車、もう嫌だ」

 少し前、こんな事を言われたので、私はサブディーラーをあたり、新車を考えてみようと話をした。無理をすればいつでも買えるようだけど、今はメーカーで受注を受け付けていないみたいだ、と話をしたのだが、私の不安定さを理由に、この好意は全く受け入れてもらえなかった。怖い変な顔をして怒られた。正直、これはかなり頭に来た。

 私が働き出せば少しは良くなるのかもしれないが、この任期も長くて一年半。今後の不安定さは未だに残るので、おそらく彼女の状況は変わらないであろうことが推測される。

 「私が先に死ぬから」彼女は自分勝手なことを言う。
 「わかった。俺が死ぬまで働くから安心して」私はこんな事も言った。
 「死ぬまで働くから、今だけは少し休ませてくれ」とも言った。

 私はまだ、夜寝ることができるし、暴言も暴力もないので、とりあえずは病気ではないとChatGPTさんには言われている。

 還暦を迎えて早々、こんな事になってしまっているのが悲しい。

 仲が良い、と言われていた私たちでさえこうなのだから、普通の家庭なら大変なことになるのだろう。

 やはり結婚というのは難しい。

 あのまま屋久島で暮らしていたらどうなっていただろうな、と、今回ばかりはふと思った。