商品

 昨日再び、商品の問い合わせがあった。ポルトガルからだ。

 物は古い食器なのだが、問い合わせ内容は、「その商品に割れや傷はありませんか?あなたは私よりも商品に対しての知識があるはずです!」というような感じの文章だった。

 先日にひき続き、これで問い合わせは二回目なので、そこそこ興味を持ってくれていると思い、丁寧に対応した。丁寧にも何も、問い合わせ対応自体が久しぶりなのである。
 わかりました。今は仕事中なので、夜家に帰ったら商品を再度確認して、写真も撮影して連絡しますね。どうもありがとうございます。と、仕事中の待機時間にスマホで返信した。

 夕食が終わり、自分の部屋に戻り、山の中から商品を探す。eBayでセラーをはじめた当初に出品した物だったので、ちょっと物の在処に自信がなかった。

 まず、プラスチックのケース棚の中を探してみたが、ここにはなかった。おもちゃや骨董品やら古い絵葉書やら、出品できていないものがいろいろとあったが、ポルトガル向け予定の物は見つからなかった。

 ここかなと思っていた所にないと、結構焦る。

 次はもう一カ所、同じくプラスチックのケースを積み上げてある所にアプローチしてみた。ここに辿り着くまでは、とても大変だ。数々の空き箱やトランペットの教則本やビジネス関連の書籍やら捨ててしまったラジコンの送信機やら、あれやこれやを避けてようやく辿り着き、探してみたけれど、ここにもなかった。

 こうなると更に焦ってしまう。残された時間は1時間。大丈夫だろうか?

 更にもう一カ所の山に取りかかる。昔よく売れていた人形が沢山出てきた。新聞紙で包んであるのだが、十年近く経過しているので、かなり劣化している。

 ほぼ最後にチェックした段ボール箱の中に、その商品はあった。そういえばこの種類の物はここに入れておいたなと、売れていた当時の事を何となく思い出す。商品を取り出し、状態をチェックし、写真を撮影し、問い合わせにきちんと対応することができた。

 eBayは、そこそこの規模のストアを開店して維持するだけで、今のレートだと月に5,000円程度の出品手数料がかかってしまう。こちらを販売できたとしても、利益自体、この額には及ばないのだが、このようにポルトガルなどの国から問い合わせがあると、それだけでも有り難いのだ。

 この、喜びというか、感謝というか、人間の本質に訴えかけるような何とも言えない気持ちに支えられて、eBayのストアの出品を、高い手数料を払いながら何とか維持している。ここへ来て状況が少し良くなってきた感じがするので、もうちょっと売れてくれればありがたいかな、と思っている。

 私の部屋の中にはがらくたとも商品とも言えるモノ達が満載だ。出品すれば、おそらく売れると思う。価格を安くすれば、必ず売れると思う。出品自体が面倒なのと、価格との折り合いが難しいのと、コロナで安い送付方法が使えないのとで、今は新規出品を見送っているが、老後の楽しみにはもってこいの仕事だと思っている。

 仕事、収入、やりがい、などなど、何とかバランス良く組み立てて、これからを暮らして行きたいと思っているのだが、現実は毎日に振り回されてしまい、なかなか難しいのである。