木曜日の朝、待機時間を利用して、病院の担当看護師に電話をした。
A4の紙いっぱいにシナリオを書き、自分の言いたいことを全て伝えることができるように段取りした。
今までの状況と、私が不審に思っていることなど、もうどうでもいいと思いながら全てを話した。感情的にならないように心がけた。そうなってしまいそうな時には、声を少し大きくして、ゆっくりと相手に伝えるようにした。
面倒臭く、嫌な相手だと思われても仕方ない。相手から受けた電話の内容に対する答えなのだからと割り切って、私も悔いが残らないようにと、必死になって話した。
「私たちのやろうとしている事を、病院間、病院と施設間のしがらみで、じゃましないでください」
最後にこう言って電話を切った。
一番はじめ、他の病院に転院して、そこでリハビリをし、そこに入ってからケアマネに頼んで施設を決める、との方針を伝えた。病院はケアマネの所属する会社が経営している病院で、かつても入院歴があるので、入れることに疑いの余地はなかった。
しかし最後の最後になって、「希望する病院に転院はできなくなった」と電話があり、ケアマネには「私は病院に入った時点であなた方のケアマネではありません」と、信じられないような言葉でケツをまくられた。私たちは、それならそちらで転移先の病院を探して下さい、その後自分たちで施設を探して、その施設に行きますから、と、お願いした。
転移先はいつまで経っても決まらなかった。
私たちは何かを察し、頼りにしていたケアマネに裏切られてしまったこともあって、自分達で施設を探しはじめた。入院当初、病院側から提示されていた施設は、こちらの予算も聞いてもらえることなく、要介護2なのに25万とかの額を頭から言われていたので、これでは話にならない、生活が破綻してしまうと、病院にお願いする義理はなかった。
こうして一生懸命になって、あっちこっちに電話をして、腹膜透析はダメだと何カ所にも断られながらも何とかみつけた施設に、自分達で入居を決めた。
その施設が病院に実態調査に行ったところ、消毒や食事の用意などの段取りで入居まで時間がかかるので、この施設に一度入ったらどうかと病院側から言われた。金額的には私たちが探したのと同じような予算で入れるらしいのだが、敷金が必要だし、根本的にこの施設を持っている、知っているのなら、どうして入院当初に教えてくれなかったのか、私たちは足元をみられていたのだな、と、勘ぐってしまうのである。
そりゃ、元公務員で2割負担だけど、いろいろな支払いもあるし、彼はかつてめちゃくちゃな経済状況で生活を回していたので、その全てを施設利用料に回すことなど、現実問題として、到底不可能なのである。
こちらの病院は、あからさまに、医療と介護の根本的な部分を間違えている。
私は担当看護師に
「看護師になろうと、必死になって頑張っていた時のことを思い出してみてください。患者さんと、その家族に向けて、仕事をしようと頑張ってくれていたと思います。だけど今は、いつも目の前にいるドクターの言葉に怯えながら、病院、お金、しがらみの調整、などに向かって貴方はお仕事をされています。一度基本に戻って考えなおしてみて下さい」
と伝えた。看護師は蚊の鳴くような声で相槌を返したが、何か不本意な意志を伝えるような感じだった。
朝電話をして、その後一日、もしかすると担当医師や彼女からもう一度連絡があるかもなと思っていたが、それはなく、一日が終わった。
これでスッキリとした。
明日は、今度お伺いする施設に、最終的な確認の電話をしようと思う。
あれこれとやることがあるけれど、もう少しの辛抱である。