金銭感覚の違いとヤクルト破産の危機

 夕食後、カミサンとソファーでくつろいでいると、カミサンのスマホに義父から電話がかかってきた。

 さすがにカミサンも無視するわけにはいかない。文句の一つも言いながら電話を取った。

 「手術は成功した。あと、大晦日におせち料理が配達になるから」

 とのことだった。

 カミサンは大激怒である。あんな思いをしながら、手術室に入るときも出るときも見送っていたのに、もちろんこちらは状況もわかっているのに、彼は何もわかっちゃいない。

 普通の人ならまずは出るであろう、「いろいろとありがとう、迷惑かけるね」というような感謝の言葉などは出るはずもなく、考えていることは、その体型が物語っているように正月のおせち料理だ。

 このおせちも曰く付きで、毎年私達はこんな高い物いらないと文句を言いながら、仕方なく食べている。毎日毎日オムツ代とパジャマ代で1000円以上、それ以外にももちろん入院費用がかかっているのだから、このお金の心配をまずはして欲しい。

 彼はヤクルトが好きで、毎週山のように買い求めていたのだが、この価格を調べてびっくりした。計算すると、毎月1万5千円程度、ヤクルトを買っていた。糖尿病なのだからやめて下さい、と言いたかったのだが、それの言い訳になるようなライト (それでもカロリーや糖質は高い) なる商品を勧められたのか「大量に」買っていて、その金銭感覚はあきれるばかりである。

 こちらの方々は私達のいないときにいつも来てくれるのだが、当初は原付で来ていたものが、やがて電動車になり、今は確か高級軽自動車のN-Boxで配達に来てくれているようである。彼は動くこともできない今でも、カミサンに金を持ってこいと言っていたらしいが、おそらくこれは病院内を売り歩いているヤクルトさんを呼び止めて、ヤクルトを買いたいのだろう。カミサンは、ようやく彼の財布を握った今、ここから各種リース代と医療費と葬式代を捻出しなければならないので、もう絶対に許すことはない。彼の金銭感覚は小学生以下で、渡せば渡しただけ使ってしまうのである。一本百円もするヤクルトを、毎日毎日食事毎に2本も3本も飲まれては、こちらがヤクルト破産してしまう。もう、やめさせようと二人で話をし、最低限のお金だけを渡すようにしている。

 今まで摂生もせず、好きな物を好きなだけ食べ、身体が大きくなり、高い背広を何着も作り、自由気ままに生きてきた彼。家にいれば大音量で一日中テレビをつけ、あっちこっちの電気をつけ、台所に立てば水は流しっぱなし、冷蔵庫は開けっ放し、いくら注意をしても聞きもしないその態度に、カミサンはうつ病を発症してしまい、我慢も限界に来ていた。(現在は完治したものの、彼の状況によっては未だ危ない)

 台所で倒れた時も、悪いけど助けてくれ、でも何でもなく、うーうー唸れば私達が助けるものだと思い込んでいる。私とカミサンが、同じ日に休みで一緒に食事をしていた時だったからたまたま良かったものの、(これもかなり運がいい)、他の人に迷惑をかけてしまったら、本当に大変なことになるところだった。

 今までの人生を十分に反省して、これからの余生を送ってもらいたいと思っている。

 もうヤクルトはいいでしょ、やめてくださいね。