最近は頻繁に実家のオヤジから電話がかかってくるようになった。
殆どが、寝る際にはエアコンをどのように設定すればいいか、との質問である。
私たちなどは無意識のうちに適当にやっているようなエアコンの操作が、あまりよくわからないようで、気温が変わる度に電話をしてくる。
先日も電話があり、また同じだと思ったら、ちょっと内容が違っていた。
「掃除機で吸い込んだら、なんだかランプが点滅しているんだけど、こりゃ何だ?」
とのことだった。私は掃除機についているゴミサインのランプが点灯しているのだとばかり思い、
「ゴミパックを新しいのに換えればいいんだぞ」
と教えた。
オヤジはなんだか納得していない。
よく聞くと、ランプが点滅しているのはエアコンらしい。オヤジはエアコン命で、これに何か不具合が起こるとかなりのストレスを感じてしまう。今回もそのような感じだ。
「エアコンについているランプが点滅をはじめたんだけど、こりゃ何だ?」
「どのランプ?」
「ん~真ん中くらいについているランプがピカピカしてるんだよなぁ~」
「それは何色なの?」
「白だ」
「どんな形してんの、そのランプは?」
「ん~よく見えねぇなぁ…」
「埃溜まってんじゃねぇの?掃除してる?」
「やってねぇな…」
「正月に行くから見てやるよ。それまで待てる?」
「ん~」
どうやら相手は早急の解決を望んでいるらしい。
今回はいつもとはかかってくる時間が違い、私は自室のパソコンの前にいた。
「それさ、どこの会社のエアコン?型式わかる?AとかBとか数字とかの組み合わせ」
「東芝だな。え~と、〇〇-〇って書いてあるな」
私はパソコンにその型式を打ち込み、取り扱い説明書を見てみることにした。どのようなランプがあって、これらがどのような内容のエラーを吐くのかを調べるためである。
インターネットはこのような時もとても便利で、すぐにオンライン上に取扱説明書が見つかった。それを見てみると、わかったわかった。この高級エアコンには今まで私たち夫婦が経験したことのないような仕組みがあったのだ。
エアコンと一緒に、リモコンと、ゴミを掃除するためのノズルが付属しているらしい。そして、エアコン本体の「おそうじ」ランプが点滅した際には、このノズルを掃除機に繋ぎ、エアコン本体の左下にある専用の穴に差し込んで、10秒ほど中のゴミを吸い込む。そして、その動作が終わったら、リモコンの蓋を開けると出てくる「おそうじ」ボタンを10秒長押しする。中の埃が掃除機に吸い込まれ、リモコンからの信号がエアコン本体で受信されると、本体のおそうじランプも消える、というものだ。
どうりで、始めに掃除機が出てきたわけだ。
話を聞けば、器用な母が、ノズルを掃除機に繋いで吸い込むところまではやったらしい。その後の処理がよくわからなかったようだ。
一応、取り付けに来てくれたお兄さんには説明を受けていたらしいのだが、実際にエアコン本体のランプが点滅したことで、オヤジはパニック状態になってしまったようだ。
「エアコン買ったときにさ、何か掃除のノズルみたいのはもらった?」
「あるある、かあさんがそれを掃除機に繋いで吸い込んだんだな、確か」
「そしたらね、エアコンのリモコンを操作するんだよ」
「どれだ?」
「隠れているボタンの中に【おそうじ】ってやつがあるから、それを10秒くらい押すの。そうすればたぶん消えるよ」
「わかった、やってみる」
電話を切って5分もしないうちに、再びオヤジから電話があり、ランプが消えたとのこと。
「ふぅ~ 消えたよ!安心した! どうもありがとう!」
「よかったよかった。どういたしまして」
声のトーンは、かなり満足度が高いものだった。
私はパソコンの前にいたからわかったものの、こんな仕組みのあるエアコンもあるんだなと思った。
それと同時に、私がパソコンの前にいなくて、オヤジの話を聞いているだけで解決できたかと思えば、おそらくできなかっただろう。掃除機とかランプとかエアコンとか、この仕組みがわかったからこそ、繋がったのである。
とりあえず、親を助けることができてよかった、ということで、今年の正月はほんの数日になるかもしれないが、実家に顔を出そうかなと思っている。
400キロ近く離れてしまっているけれど、できることはサポートするので、何とかがんばってほしいものである。