同級生で一番仲の良い友人の一人が早期退職をした。

 とある有名大企業に30年以上勤めていたが、労働から解放されたいと、この夏に退職してしまった。

 先日会って話を聞いたのだが、その条件はとんでもないものだ。

 早期退職を選択すると、現在の年収の3倍プラス通常の退職金がもらえるとのこと。

 企業からしてみれば、ここまで上積みしてまでも、退職をしてもらいたいということなのだ。会社は給料を払う以外にも、社員の社会保険料を負担している。これなどは実際に会社を辞めてみなければわからない人が多いだろうけれど、これもかなりの負担なのだろう。

 かく言う私は、貯金もなく、バイト扱いでお世話になっている会社には退職金制度などがあるはずもなく、あるのは日に日に増えていく借金ばかりである。

 でも、冷静になって考えてみれば、彼だって今まで相当大変な仕事をしてきているのだから、この退職金はそれの代償なのである。会社組織の中で企業戦士として第一線で機能し続けるということは、いかに大変で、価値のあることだったのか、ということである。
 
 私なんかは会社組織を見ているだけで嫌気が差してしまい、この先このような組織でやっていくという事は性格上無理だった。だからこうなのである。

 ラインで繋がっている同級生を見ていて、心の中でいつも嫉まないように心がけてはいるのだが、実際問題、なかなか精神衛生上難しいものがある。

 私の父親も同級生との付き合いを長い間続けてきたが、ある時を境に、何とそれをきっぱりと断ち切った。交際費にお金がかかるからだった。

 これを聞いたのは数年前の事だったが、金がないと言いながら私を育てた父親も、彼なりに苦労していたのだと思ったものである。

 できるなら私だって、子育てがほぼ終わって老後の謳歌が始まりつつあるこの組織から、オヤジ同様とらばーゆしたいという気持ちがなくはない。しかし今はラインなどで繋がっているし、それを切り出す勇気もないし、ただ、なるようになれと思いながら、あっちこっちに出かけては写真が上がってくる現実に、複雑な思いを寄せるばかりなのである。

 お金はあればあるだけ大変なのかもしれないが、私の場合はもう少しだけでも余裕があれば、もうちょっと人生が拓けるような気がしている。それを目指して各種の副業に手を出している訳だけれど、成果を問われるとまた、落ち込んでしまう。ここを突っ込んで来ない妻には、感謝するばかりである。

 とにかく今は見た目は年齢以下に見られ、白髪も少なく、健康である事だけが取り柄で、この体調を維持していけばあと10年以上は今の会社で働くことができそうなので、これを維持しつつ、少しずつ今後の事を考えて行けばいいと、楽観的に考えるようにしている。