夕飯を終えると、夫婦でお気に入りのYouTuberのコンテンツを見るのがすっかり日課になった。
時代の流れに乗ったのか、テレビのバラエティー番組は、ほとんど見なくなった。
カミサンも私も、一人の時にはそれぞれのお気に入りがあるが、二人で楽しめるチャンネルももちろんある。現在私達の中でかなりの位置をしめているものに、とある韓国の方のチャンネルがある。
現在30代半ばのその方は、日本と韓国の架け橋になりたいとの思いで活動をされている。コンテンツは料理、韓国語、それぞれの国の文化や習慣に関すること、日本での釣りやキャンプやドライブ、視聴者を集めたオフ会、コスメの紹介、などなど、子供の成長記録を兼ねて、さまざまなコンテンツが提供されている。韓国出身の方が日本を紹介していることで、新しい気づきがあったり、視点を再確認することができたりして、どれも面白い。
生まれた国ではない異国で成功している人、成功できる人の最大の特徴だとは思うが、彼はおそらく私なんかよりも上手に日本語を話してくれる。日本語は海外の人にとっては難解で、マスターするのが大変な言語だと言われているものの、彼は喋りだけではなく、読みも書きもほぼ完璧だ。
おそらく彼は、あれこれに可もなく不可もなく、漠然と満足してしまっている私達日本人からは想像できないレベルの努力を、今までにしてきたのだと思う。
彼には配偶者と小さな子供がいる。驚くべきことには、配偶者も同じレベルで、ネイティブな日本語を話す。子供は今、言葉をまさに覚えている最中なのだが、普段は日本で生活しているので日本語が多いものの、彼の実家の韓国に帰省し、彼の親と喋る時には韓国語で喋っている。これもとても興味深い。
彼は日本のビジネスにおいて、沢山の日本人を雇用している。そして今回も、スタッフを募集するとの告知が、動画を通してなされた。
聞けば、彼は最近、韓国政府公認の機関からの仕事など、日韓交流におけるさまざまな分野での活動などもはじまり、事業全体がとても忙しくなっているのだという。
私達がいつも見ているのは彼のチャンネルだが、彼の奥さんも子供もそれぞれチャンネルを持っている。編集する人材が圧倒的に足りないので、こちらのチャンネルの方は現在、新しい動画をリリースできないのだという。
傍から見れば彼はどう見ても成功者だと思うのだが、本音を聞くと、成功したように見える今現在であっても、常に朝から晩まで悩んでいると言っていた。
スタッフには家族がいるので、その家族を守らねばならないとの責任感。もちろん自分の家族。そして日本と韓国の架け橋となる活動。責任が忙しさに比例して大きくなってしまっているのだろうか、他人ながらちょっと心配ではある。
この方を見ていると、バイタリティーに圧倒され、今は何もできていない自分に対しての劣等感に苛まれてしまう。かつては誰もがしたくてもできないと言われていた、キャンピングトレーラーでの田舎暮らしを現実の物として粋がっていた時期もあったが、今は年相応になってしまい、何をやっても成果が出せず、それなりの生活しかできていない。
しかし悪いことばかりではない。彼と私との間には、一つだけ共通点があった。それは血液型で、二人ともO型なのだ。だから同じように悩んでしまうのか、なんて強引に共通点を探してはみたものの、これは全く違うな、彼に失礼だな、と、再び現実に戻された。
実はチャンネル登録者が960人いて、もう少しがんばれば収益化ができそうなYouTubeのチャンネルが私にもある。でも今はバイト先との兼ね合いもあるので顔出しもできないし、自分のスキルもみっともないしで、なかなか動画をリリースすることができないでいる。更新が滞ればチャンネル登録者が増えるはずもなく、こちらもお得意の宙ぶらりん状態なのである。
今のままでは、今のままで人生が終わってしまう。
最後に何とかもうひと花咲かせることができないかなと、いつも考えてはいるのだが、現実を見るとそれはなかなか難しい。
とりあえず今は、何とかインターネットからの収入の道を作ろうと、もがいている最中である。