生まれつき、コレステロール値が高い。
健康診断では毎年ひっかかっているが、その都度、近所のかかりつけ医と話をし、遺伝だから仕方ないね、気を付けて、ということで今まで来ていた。
ところが、このかかりつけ医が病気で倒れてしまった。
胃の検査でも引っかかっているので、内視鏡をお願いするお医者さんに相談すると、薬を飲んだ方がいい、と勧められた。
もちろん、私は薬が嫌いで、いくら優しいこの先生でも、薬の処方を受け入れることはできないな、と思いながら、とりあえずLDL値の確認のための採血には応じた。
ちなみにLDLは160を超えている。
昨日一緒に仕事をした新人さんは、かつて脳梗塞で倒れ、頭を開き、バイパス手術をしたという病歴の持ち主。かなり長い間リハビリをし、何とか普通に歩くことなどはできるが、やはり身体の半分に異常をきたしており、力を加える所の仕事などは、なかなか難しい様子だった。
いろいろと話をしたのだが、やはりコレステロール値と血圧が高いのを放置していたのだという。
家に帰って、カミサンが開口一番、「ショックなことがあったの…」という。
聞けば、そこそこ仲のいい同僚の旦那さんが、突然亡くなったのだという。
子供が何人かいて、一戸建てに住み、ようやく最後の子供が巣立って、これからは夫婦の時間を楽しもうと思っていた矢先の出来事。
私との会話の中にもこの方はよく出てきて、旦那さんの話も何度か聞いた覚えがある。
病気なら、ある程度、心の準備もできるのだろうが、突然死というのは、かなりショックである。カミサンも、かなり辛そうな様子が見て取れる。
「だからさ、薬飲んで…」
「俺も今日一緒に仕事した新人さんが脳梗塞を発症した人でさ、突然の病気は怖いと思って、薬を飲むようにしようと思ったところなんだ」
「偶然同じ日にこんな思いをするなんて、何かの力が働いているのかもね」
「そうかもしれないな」
私は検診で引っかかるとすぐに薬を処方するこの日本の医療体制に、長い間異議を唱えてきたのだが、身近にこのような事例を見て、これからの人生を楽しむためには、薬の服用も含めた自己管理が必要なんだろうな、と、気持ちをあらためた。
私はもう、かつてのサラリーマンなら定年、もはや還暦のポンコツだ。
身体はあっちこっちにガタがきている。
今度、検査の結果が出たら、薬の処方を受け入れようと思う。