我が家の前の家に、行政の手が入っているようだ。

 こちらのお宅には、私たちと同世代の男性と、その弟さんが二人で住んでいる。

 男性は少し前に脳の病気をしてしまったようなのだが、今までは何とか歩いて近くのスーパーへ買い物に行っていた。

 しかし最近、見かけなくなった。

 弟さんはいるにはいるのだけれど、引きこもりで、全く様子がわからない。

 大きな家なのでなおさらである。

 この大きな家には大きな庭があり、かつてお母さんが元気だった頃はお母さんが手入れをしていて、いつの季節も庭の中は綺麗になっていた。

 しかし、このお母さんが家からいなくなってしまうと、庭は荒れ放題となり、人の背の高さほどの雑草が生い茂る森のようになっていた。

 私もカミサンも、火が出なければいいけど、と、心配していた。

 数日前、こちらのお宅から複数の声が聞こえたので見てみると、庭の草刈りをしているようだった。あまりじろじろと見ても失礼なので、いつもの動きのついでに確認してみると、民生委員が手配したような感じの方々が7-8名いて、ちょうど庭の草刈りが一段落ついたところのようだった。

 やはり母親なき後、長男が何とか、病気も乗り越えて頑張って住んでいたのが、いよいよ病気が進行してしまい、自分で買い物に行けなくなってしまい、民生委員あたりから行政に対して働きかけがあったような、そんな感じなのである。

 私たちの家は、この大きな家が頑張ってくれているので、かなりいい環境で住まわせてもらっている。

 敷地はかなり広い。150坪くらいあるかもしれない。万が一何らかの事があって、この家が取り壊しになり、そこにマンションか大規模住宅などが建築されてしまうと、一瞬で我が家は真っ暗け状態になってしまう。

 ここへ来てからずーっと今の状況で変化がなかったので、できればこのまま何とか頑張って欲しいのである。

 また、左側の隣は90過ぎのお爺さんとその息子が二人で住んでいる。ここも庭があり、今まではこのお爺さんが手入れをしていたのだが、今年になっていよいよ動けなくなってしまったのか、今年は前の家の如く、業者でもない、友人でもない、前の家と同様の状況で、おそらく行政の方の手で庭の手入れがなされた。

 ここの家の庭はブロック一枚で我が家の庭と隔てられているので、庭の手入れをする際には、剪定した枝を回収しに我が家の庭に足を踏み入れる必要がある。

 いつもはお爺さんがやって来て、私などに話しかけてから入ってきていたのだが、今年からはこの中の一人がやってきて、我が家の玄関のベルを押したようだ。

 カミサンは、荷物は全て置き配だし、クールの指定の配達以外は、玄関の来客には対応しないようにしている。電話に出ない義父の様子を聞きに来る親戚や町内会関連の人がそれなりにいて、彼女は義父が電話に出ないことに起因するこの対応がとても嫌だといい、こうなった。これは仕方がない。

 とにもかくにも、高齢化である。

 自分で身の回りの事ができなくなる人がどんどん増えている。

 私だっていつまで身体が動くかわからないし、子供もいないし、どうなるのかなんて考えたくもないが、その時は近いうちに必ずやってくる。

 何かいい、画期的な仕組みを作ってくれればいいのになと思っているけれど、なかなか難しいのだろう。

 何とか健康を保って生きていくしかないなと思っている。