先週末、同じ仕事をしている大型トレーラーの仲間と、積み場近くですれ違った。
でも、ちょっと様子が違った。
私達がいつも運んでいる荷物を積んでいない。
整備工場へ、三ヶ月点検にでも持っていったのかなと思ったが、よく見ると事情がわかった。
台車の上には夏タイヤ。ラッシングで固縛されている。トレーラーの台車部分の8本と、トラクターの6本、合計14本。
契約しているタイヤのお店に行って、夏タイヤから冬タイヤに交換してきたのだろう。そういえばもう、11月も半ばを過ぎ、後半に差し掛かっている。
20数年前、私がこちらへきて、二番目にお世話になった運送会社では、10月のうちに全てのトラックのタイヤをスタッドレスに取り換えるように指示されていた。
当時その会社にはタイヤチェンジャーなどの機械はなく、全てのタイヤを人間の手で剥いて、人間の手で組み付けるという、今思い出すなら気が遠くなるような作業を、トラックの台数分、タイヤの本数分行っていた。
当時その会社には、現場運転手から事務所に上がったばかりの「班長」と呼ばれる人がいて、強力なリーダーシップを取り、それこそ命をかけてこのタイヤ取り替え作業にあたってくれていたので、私などの入社したての下っ端は、言われるがままにしていればよかった。
やがて時代の流れで、勤務時間の短縮が叫ばれるようになった。この会社は、私が退職する数年前に大手のタイヤ会社と契約をしたようで、私達は、タイヤ交換をする時にはお店に予約を入れ、時間に合わせてそこに持ち込めば、タイヤ会社の人が全ての作業を行ってくれるようになった。事務所内に備え付けられているコーヒーなどを飲みながら待っていれば、タイヤ交換が完成してしまうので、時代は変わったなと思ったものだ。
しかしこの会社は、ECサイトの配送欄に時々名前が出てくるレベルの、準大手の運送会社だったので、このような契約ができたのだ。
インターネットの仕事をするからとここを辞め、ネットビジネス挫折の後に再び運転手に舞い戻った今の会社は、やはり全てのタイヤ交換を自らで行わなければならない会社だった。ただし、タイヤチェンジャーと呼ばれる機械や、屋根の付いたタイヤ専用ピットはある。
こちら、東北地方で運転手をして暮らしていくには、この、スタッドレスタイヤへの交換作業は必須なのである。
冒頭に「すれ違った」と、ご紹介した会社のトラックは、かつての某国営企業、民営化された今でももちろん超大手の会社の子会社のトラックだ。当然ながらというか、かつての組合が強かったからというのが理由なのかはわからないが、運転手に対しても最高峰の待遇なのである。
表面上では、同じようなトラックを運行している運送会社AとBなのだけれど、少し深掘りをして見るなら、この辺りのタイヤ交換などに関する運転手の環境は、運送会社Aと運送会社Bとでは、未だにかなりの違いがある。
私がお世話になっている会社は、現在の会長が一人で立ち上げた運送会社であり、50年以上の歴史がある。がんばってくれてはいるけれど、さすがに超大手のようにはいかないのだ。タイヤ交換、オイル交換などのメンテナンスは、運転手がしなければならない。
どかんとスタッドレスタイヤが運ばれてきて倉庫に山積みになり、目に見えない順番に従って、毎年着々とタイヤ交換は行われる。
いつも遠くの雪が深い地域へよく行く人が優先で、年功序列も少しある。トレーラーのヘッドは駆動する軸が1軸のタイプと2軸のタイプがあるが、2軸のヘッドが優先のような慣習もある。
このような目に見えないふるいにかけていくと、いつも地場の平坦地しか走らない私などは、一番最後になってしまうのが、ここ最近の傾向である。
毎年、年が明けるまでには何とかなるものだが、毎年この時期になると気が重くなってしまうのである。