割り込みとあおり運転

 今朝、積み場に向かう道路で、軽自動車が私の大型トレーラーの前に割り込んできた。

 大型車は万が一の時に備えて、車間距離をかなり長く取って走っている。そうしなければ、ブレーキをかけた際、積み荷に負担がかかってしまうからだ。

 相手は軽自動車で、ウインカーも出さず、私が停まる寸前の所で何事もないかのように割り込んできた。もちろんお礼のハザードなどはるはずもない。

 ここはトラック専用の道路でもないし、通勤時間帯ということもあり、このようなことは日常茶飯事なのだが、私だって人間なので、虫の居所が悪いときには強い怒りを覚えてしまう事もある。ただ、家族もいるし、一応はプロのドライバーだし、これで飯を食っているわけだし、仕事を失いたくないし、などの思いから、何とか毎回理性を利かせて、この怒りをやり過ごしている。

 あおり運転がよく話題になる。
 
 ドライブレコーダーが普及してから、皆様よくニュースなどで映像をご覧になっていると思う。

 もちろん大前提として、最終的にはあおり運転をした者が悪い。しかし、仕事として、一日の時間の大半を道路の上で過ごしている私から言わせれば、もう少し報道して欲しいことがある。それは、あおり運転に繋がってしまった原因と、その原因が起きてしまったときの映像だ。

 あおり運転には殆どの場合原因がある。被害者の方が悪いという訳では決してないのだけれど、この原因は被害者の方が作り出している場合が多い。

 いつか報道された、大型トラックのあおり運転のケースなど、私は正直なところ、報道が不公平だと思った。

 確かにあおり運転をした大型車は悪い。しかし報道された動画には、運転手の「このやろう、ぶつかるところだったじゃねぇーか!」という声が記録されている。

 おそらく今日の私のように、乗用車が大型車の前に何事もなかったかのように「ひょい」と割り込んできたのだろう。乗用車とは違い、トラックは荷物を積んでいる。これは何にせよ、めぐりめぐるなら皆様の生活のための物であることをご理解いただきたい。

 きちんと荷物を積んで固定してある場合でも、目の前に飛び出された車を回避するようなレベルの急ブレーキを踏んでしまえば、その荷物はひとたまりもない。壊れたり破損したり、道路に落ちたりして、大変なことになる。

 トラックの場合だけではない。

 先日も、乗用車が高速道路上であおり運転をされた動画がニュースで流れていた。乗用車同士、あおり側が被害者の車を高速道路上で停止させ、恫喝と車体への暴力の後、被害者のナンバーを控えて走り去っていった。

 もちろんこれだって、あおり運転をした者が悪い。あおり運転をしている訳だし、大きな声を出して威嚇している訳だし、相手の車を蹴っ飛ばすなど言語道断で、当然逮捕されるべき犯罪行為である。

 しかし、この報道においても、原因となった際の映像は流れていない。このケースでは、「追い越し車線を長い間のろのろと走っていて道を譲らなかった」事が原因だったのだが、こののろのろが果たして何キロ位だったのかは、ドライブレコーダーに記録されているはずなのだが、公開されていない。

 これが公開されれば、「あおり運転をされないために、ドライバーが守るべきこと、すべきこと」というような警鐘を鳴らすことができ、最終的にはあおり運転の撲滅に向けての活動ができるのではないかと思う。

 ハンドルを握ると人が変わる、と言われる人がいるように、自動車の運転動作には人間の心を大きく「悪い方へ」「ほんの一瞬で」動かしてしまう力が備わってしまっている。「大型車の前が空いていたので車線変更して前に入った」、「高速道路で制限速度を守り追い越し車線を走行中、後ろから車が近づいてきたが、制限速度で走っているからいいと思い、走行車線に戻らず、そのまま走り続けた」「変な所に駐車している車がいたので、注意した」などの事が、命を落としてしまう程のあおり運転に繋がってしまうケースが十分にある。

 年末年始にかけ、交通量も増し、普段運転されない方が道路に出る機会も増えることと思う。とにかく何かあっても興奮せず、落ち着いて、相手を思いやる思いやり運転を貫いていただきたいと思う。