損保ジャパンが、ビッグモーターとの代理店契約を解除するという。

 私は損保会社全般に対して、今までの仕事の経験から、あまりいい印象を持っていない。

 これから書くものは、全て個人的な意見である。

 まず大前提として、ビッグモーターは、絶対にいけない。悪いことをしている。今までのビッグモーターは悪い会社だった思うし、何らかの制裁を加えられなければならないと思う。前社長や前副社長の言動からも、許されるものではない。

 それを踏まえて。

 日本は世界に名だたる自動車王国である。車を走らせるには、当然車を買う必要がある。そして忘れてはいけないのだが、車を買うと、必然的に私たちは諸経費という名目で、各種税金と自賠責保険も購入することになる。わかりずらくなるので、税金も買うという言葉を使う。

 そして、毎回の車検時には、その都度税金を払い、自賠責保険を買い、整備代金を払って整備を行うことになる。この自賠責保険は、どこの会社で入るのかを、大抵は選ぶことができない。

 自動車重量税は国税、自動車税は都道府県税、これらは仕方ない。

 しかし、問題は自賠責だ。

 どこの会社で入ってもいいはずなのに、それを私たちには知らされず、必然的に窓口と関係のある損保会社の自賠責に加入することになる。

 価格は同じ商品なので、競争原理は働かない。

 国の決まり、という息がかかっているものなので、商品特性が異常だ。

 
 そんな商品なのに、この自賠責の売上げに対して、各損保会社は目くじらを立ててシェアを争っている。

 私はこの先の事情には詳しくないが、おそらく国からの補助金が、シェアによって変わってくる、すなわち、保険会社の売上げに直結する問題なのである。

 値段を変えることのできない、この自賠責という商品を、いかにして自社に取り込むかを、各損保会社は考えている。

 取扱高の多い、ビッグモーターのような所には、必然的に損保会社が群がる。

 
 損保ジャパンは、ビッグモーターと代理店契約を結ぶことによって、ビッグモーターの販売する車や、車検時に強制的に入らねばならない、自賠責保険、わかりやすく言うなら「強制保険」を、全て損保ジャパン扱いにした。そして、売上げが上がり、結果として国からの補助金のようなものを得ることで、多大な利益を得てきている。

 ビッグモーターが悪いことをしていたのは、わかっていたはずだ。

 ビジネスパートナーが悪いことをしているのがわかったのなら、代理店と契約をしている親として、注意をして、改善させるのが義務だ。

 それにメスを入れないばかりか、一方的に代理店契約を解除するなど、あり得ない。

 麻原彰晃率いるオウム真理教には、破防法が適用されなかったのと同じように、代理店契約解除というのは、地球が滅びるレベルの最後の最後に切るべきカードだ。

 国は、損保ジャパンがこのカードを切るのなら、損保ジャパンに対しても、保険業務全般の取り扱い許可を解除するべきだ。もちつもたれつで利益を上げてきたのだから、両方が裁かれるべきである。

 ビッグモーターは、それはもちろん悪いのだけれど、一応反省の姿勢を見せていて、今までの不正を正し、正しい方向へ向かうように努力をするものと思われる。その姿勢を根こそぎ刈り取ってしまう「代理店契約解除」をするということは、今まで関わってきた不正に対して、損保ジャパンは「さじを投げますよ」ということに受け止めていいだろう。

 私が一番腹立たしいのは、ビッグモーターを始めとする自動車ディーラーに出入りしている、損保各社の営業の給料が、とんでもなく高いという現実だ。

 とにかく言いたいことは、損保ジャパンとビッグモーターはお互いに不正をして、不正を受け入れて、双方が利益を上げてきたという事実があるということ。それなのに、損保ジャパンが一方的に代理店契約解除を通告するのは、道理的に間違いであり、代理店と非代理店側との共同責任だ、ということを一人でも多くの方に知っていいただきたい、ただそれだけである。