故障

 仕事で乗っているトラックは時々壊れる。

 今日はいつもとは違うトラックに乗っているのだけれど、メーターパネルの真ん中にあるマルチインフォメーションには「EBS故障」という真っ赤なランプが点灯している。

 昨日担当者から引き継いだ時に説明があった。会社の工場で見てもらったけれど、昨日完全に修理することはできないらしいので、気を付けてこのまま乗って、というような内容だった。

 EBSというのは、トラックのブレーキを司るコンピューターのこと。ブレーキをどの位の強さで踏んだのか、どの位の力のブレーキを要求されているのかをこのコンピューターが判断し、瞬時にトラックのブレーキの効き具合、強さを制御するものらしい。

 朝、エンジン始動時はこのランプが点灯していた。燃料を入れるためにエンジンを止め、再度起動したら消えた。今、現場で待機しているが、少し前まで消えていたものが、再度点灯している。まだ、点灯したままで走ってはいないので、怖い。

 普通に考えれば、「ブレーキが故障しているなんてもってのほか、すぐに修理!」というのが知恵袋や何やらに書かれている正論なのだろうけれど、現実はちょっと違う。

 本当に、クラッチが逝ってしまってトラックが立ち往生して動かないとか、エンジンがかからなくてトラックを動かすことができない、といったレベルの故障でない限り、だましだまし様子を見ながら、何とか車が空く時間をつくったり、工場に無理を言って、残業してもらって直したりしなければならないのが現実なのである。

 はい、今日は風邪ひいたから休み、とか、体調不良で休みます、といったような理由では休むことが認められないのが、この業界。

 今日はこちらの地域にしては珍しく、今現在、一時間に数十ミリレベルの雨が降っている。この雨の中、ブレーキシステムに異常をきたしているトラックに乗って、今日一日仕事をしなければならない。

 本能的に、道の真ん中で止まって後ろに渋滞の列を作ってしまうような事にはならないのはわかっているので、何とかだましだまし運行するつもりではあるけれど、やっぱり赤いランプというのは緊急を要する警告だろうから、さすがの私も少々怖い物がある。
 でも、これをやらなければ生活できないのが現実なので、何とかコンピューターなしの状態でトラックを操作して、一日を終えなければならない。

 今日も気を付けていかなければな、なのである。