父の介護と、姉の苛烈な言葉のあいだで

 親の介護がはじまってから、頻繁に姉から連絡が来るようになった。

 私は親から離れているので、直接親と対峙できるのは、姉しかいない。

 産まれてからずっと一緒に居たので、今さら存在に気付くこともなかったし、化粧っ気もなく、今のご時世の女性とはかけ離れた所もあるので、それこそ今までは空気のような存在だった。

 しかしここへ来て、親にめんどくさい状況が発生し、姉が対応してくれている。母は特養に入ったのでいいのだが、問題は父だ。

 カミサンがよく言うが、50位の子供が80位の親と一緒に買い物に来る事がよくあるらしいのだが、この組み合わせは子供が男、親が母、という組み合わせが殆どなのだそう。この逆はない、と言い切っていた。

 我が家も例に漏れず、姉と父は仲が悪い。
 カミサンと去年他界した義父なんかは典型だった。

 母は特養に入ったので手がかからないが、父は実家が「自分が買った家」という認識があるようで気に入っている。痴呆の状況もそれほど進行してはいないので、小規模多機能ホームに入っている。ここは、泊まったりデイサービスを受けたり、食事をしたり、という事を自由に組み合わせることができる所なのだけれど、どうしても家に居る時間ができてしまう。これは家に帰って暮らす事が前提という、このホームの仕組みだから仕方がない。

 その家に居る時間に、父は私たちに電話をかけてくる。元々、ここへお世話になる前が酷かった。そしてここへ入れば少しは良くなるかと思ったのだが、今でも時々電話をかけてくる。

 この電話を姉は猛烈に嫌っており、スマホはブロック、家電は息子が出て即切りという状況。しかし父はめげない。めぐり巡って私の所にかかってくる。Perfumeの巡ループは可愛いが、こんな風に巡ってもらっては困る。

 姉は病院の予約をしたり、和民の宅食を調整したり、施設や病院との打ち合わせをしたり、きちんとやることはやってくれている。

 カレンダーにスケジュールを書くらしいのだが、父はこれを何度も確認したがる。この動作も痴呆の一種なのだとは思うが、この電話が姉は気に食わない。

 「姉から電話が欲しい」と、父から私に電話があった場合、以前は私が姉に電話をして取り次いでいた。しかしある時点から、姉は父に一切電話をしなくなった。

 そして姉は、父が私に電話してくることに対しても、怒りにも近い愚痴をこぼすようになった。私は姉がうつ病のような病気を発症してしまっては困るので、姉を擁護するようになっている。(電話やメッセージで)姉が父に浴びせる言葉は苛烈だが、人道的とかそういうレベルを超越している状況なので、仕方がない。

 当初の打ち合わせでは、父の電話は全て介護施設の方で受けますので、ということになってはいるのだが、いくら説明してもわかってもらえないことが多くなってきた。逆ギレされてしまうことも時々ある。

 私は400キロほど離れていて、すぐには行くことができないというインターバルのようなものがあるので、気持ち的に少しは楽なのだけれど、隣町に住む姉は大変だと思う。
 あまり長引いてしまうと、資金的な問題も出てくる。年金内で収まっている訳ではなく、毎月貯金からの持ち出しがある。

 父は病院に行くと、特養にいる母の悪口を言うのだという。だから病気になったのだと。これが姉は猛烈に許せないらしい。私だってそうで、聞いているだけでぶん殴りたくなる。自分は毎日家で呑んだくれていた癖に、今さら何を言っているんだと。

 傍から見れば、それなりに仲の良い家族に見えるかもしれないけれど、この関係、特に父と娘の関係は、言葉では表現できない深いところに問題がある場合が多い。

 「寒いね」「晴れデス」 こんな簡単なメッセージを毎朝送ってくるようになった姉。何とかできる形で私がフォローをしながら、この先もやっていくしかない。

 介護は奥が深いのである。