思った以上に酷い状況だ。

 私の患部は粉瘤=ふんりゅう(アテローム)という病名で、誰もがなる可能性があり、それほど珍しい症状ではないらしかった。

 しかし、見つけてすぐに医者に行けばそれほどの苦痛もなく処置ができるものの、化膿して内部に膿が溜まってしまうと、処置がとても大変になる。私の場合は化膿して赤く腫れ上がり、その上膿が溜まって破裂しているという状況なので、最悪なのであった。

 外科医は地域に密着した外来医さんなのだけれど、一番はじめに外科と書いてあるので、外科が専門のお医者さんだ。整形外科のリハビリや、一般内科の健康診断など幅広く行っていて、いつも混雑している。

 金曜日はたまたま仕事が早く終わったので、余裕を持って医者に行くことができた。

 診察券を渡す受付で、粉瘤が化膿して膿袋が破裂してしまったので、処置をして欲しいです、と伝えた。

 待つこと数十分、診察室に呼ばれ、上半身裸になって手術台のような所にうつ伏せになった。なかなかお医者さんは私の所には来ず、30分くらいそのまま待っていただろうか、施術が始まった。

 私は盲腸や脂肪腫の摘出など、外科的な手術を何度か経験しているので、施術に対してはそれ程の恐怖心はない。麻酔も大抵は殆ど痛みを感じないので、今回もそんな感じだろうと思っていた。

 「麻酔しますね、痛いよ」

 開口一番、外科の専門医はそう言って、私の背中に麻酔を打った。何カ所かに打っているようだったが、その中の数カ所が、物凄く痛い。こんなに痛い麻酔ははじめてだ。患部は背中なので、全く見えない。

 「たぶん痛いよ。言ってね」

 そう言われて打たれた麻酔は、死ぬんじゃないかと思うほど痛かった。脳からの反応で両足の先が動き、「いてぇ!」と、声が出てしまう。

 「麻酔追加」

 そう言われて追加をしたものの、痛いし、あまり追加が効いてない感じもするしで、もう大変だ。麻酔も痛けりゃ、施術も痛い。膿を揉み出しているんだか何だか、背中をぎゅうぎゅうされると、これもまた飛び上がる程に痛かった。

 そんなこんなでまたもや抗生物質と痛み止めを処方されて帰って来たものの、食事をしてその薬を飲むまで、かなり痛かった。薬を飲んでもまだ痛く、就寝時には暑いよりも痛いの方が先行するような感じで、かなりの苦痛だった。でも、それなりに寝ることはできた。これだけは私の特技だ。

 土曜日の朝は一番で、医者に行った。患部を見せると、医者は少し膿を揉み出すような感じの手の動きを患部に施し、それがまた痛かった。

 家に帰ってTシャツを着替えようとした際、患部を押さえていたガーゼが汗で濡れたこともあり、脱ごうとしたシャツと一緒に外れてしまった。その際私は鏡の前にいたのだが、患部が突然見えてびっくりした。

 患部は縫合してあるのかと思いきや、メスを入れてそのままの状態なのだ。スーパーで売っている牛肉のような色の真っ赤っ赤になっており、患部は膿でただれている。これは痛いわけだと思った。
 
 医者の説明があまりよくわからなかったので調べてみると、私の状況のように化膿が酷い場合は、このように切開をして膿を出し、しばらくこのまま、ガーゼを取り替えながら、拝膿の様子を見るのだという。

 落ち着いた所で、もう一度手術をするとかしないとか、いろいろなやり方があるようだったが、とにかく私のは一番酷い状況のようだ。

 患部には手が届かないので、ガーゼの取り替えをカミサンに頼むことにしたのだが、彼女もグロい患部を見て、かなり動揺していた。彼女も内科に関してはいろいろと詳しいが、このような外科的な状況は経験がない。
 
 とにかく、しばらくの間は、このようにしてガーゼを取り替えながら、膿を出す事を続けるようだ。患部が落ち着くまで1-2週間くらいらしいが、外科医も11日から16日まではお盆休みなので、果たしてどうなることやらである。

 何度も書くけれど、患部は私がどうやっても手の届かない、背中の肩甲骨のあたりである。本当に、カミサンがガーゼの取り替えをしてくれると言ってくれているので、助かっている。一人だったら大変だ。

 時節柄暑い時期だけれど、風呂の事を考えると、これはこれで良かったと思う。患部に水がかからないように、何とか上手く身体と頭を洗っているが、これが冬だったら寒くて大変だった。

 しばらくは医者通いとガーゼの取り替え処置が続くだろうけれど、こればかりは仕方がない。何とか治さなければならないが、それにしても大事になってしまったな、もっと早い段階で医者に行けばよかったな、と、反省することしきりなのである。