脳外科と整形外科

 義父の手術は成功した。

 「ぼくもがんばりますので」と言ってくれていた、カミサン曰く、コンビニ店員のような整形外科医が、無事に義父の大腿骨を繋いでくれた。感謝である。

 カミサンは3年前から次々と病気を発症し、脳外科、婦人科、そして循環器科と、いろいろな科にお世話になってきた。当然ながら各科が実際にどのような状況なのかを見てきている。そのカミサンは、やはり脳外科に比べると、整形外科はかなり違うのだという。

 状況にもよるのだろうが、殆どの場合、外科ではなく、整形外科の手術で死んでしまう人はいない。今回の義父のようにリスクの伴う場合もあるようだが、そんなには多くはないだろう。お年寄りが多く、その症状は膝の痛みだったり、外反母趾だったり、痛みはあるものの、命に関わるものはそれほどでもない。

 一方で脳外科は一刻を争う状況で、処置を一つ間違えると身体が機能しなくなったり、最悪の場合は命を落としてしまったりする。必然的にドクターは常に緊張との戦いを強いられることから笑顔などはなく、病棟内も神妙な顔つきの人が多いのだという。

 上下関係も厳しく、カミサンの聞こえる所で上司のドクターがカミサン担当の若いドクターに怒号にも似た強い言葉を浴びせていた事もあったのだという。

 脳外科は、ドクターの見解からはじまり、処置と手術が全てと言ってもいい程、ドクターの負担は大きい。

 一方で、今回のような整形外科の手術は、手術自体は同じような症例が多いこともあるのか、それほど困難を極めるものではないようだ。そして整形外科の場合は、手術ももちろん大事だが、大変なのはこの先のリハビリなのだと言われている。本人がどれだけ頑張れるのかで、その後の状況が変わってくる。

 カミサンの親戚の話によると、同じような手術をしたその人は、手術から懸命のリハビリを続けたが、歩けるようになるまでには4ヶ月かかった。

 こんな話を聞いたことと、自らの体験も含め、カミサンは、整形外科はちょっと違うなと思ったようだ。

 麻酔に関して、義父は全身麻酔での施術だったのだが、手術室から出てきた時には既に目を覚まし、カミサンに話しかけるまでになっていたのだという。

 一方で、カミサンは循環器科の心房細動の手術の際、全身麻酔を施され、かなり長い間眠りについていた。今回も全身麻酔と聞いていたので、しばらくは眠っているのだろうと思っていたらしいのだが、義父は意識のある状態で出てきたので、驚いたらしい。

 これも、介護施設の看護師さんに聞いてみたところ、整形外科の場合は手術室から出る前、麻酔から覚めてもらうために、スタッフが軽く叩いたり話しかけたりして起こすのだという。

 このように、入院、手術と一言で言っても、各病棟内でいろいろな違いがある。

 風の噂では、コロナ禍で、かつてカミサンがお世話になった、最新鋭の設備を備えた病院では、病棟内でクラスターが発生してしまい、手術をはじめとする新規の受け入れができない状況になってしまったらしい。

 このような厳しい状況の中、がんばってくれている医療従事者の方々に敬意を表するとともに、こんな体つきのわがままな年寄りを受け入れていただき、世話をしていただいていることに、心からの感謝を申し上げたいと思う。