ランクルヨンマル

 昨日新しい職場で、2人の人に「車すごいですね」と言われた。

 「買ってから39年経つんですよ、もうちょっとで40年です…」とか
 「錆びたり雨も漏ったりしますけどね…」とか

 そんなお返事しかできなかったけれど、この車のことをすごいと思ってくれる人がいるのは確かなようだ。

 日本には車検という独自の仕組みがあること、そして秀逸な車の生産国でもある事から、日本人は必然的にどんどんと新しい車に乗り換えて行く文化が定着している。

 10万キロ走ったらダメだとか、オイルが漏れたら修理費用が嵩むので買い換えだとか、こんな情報が当たり前になっている。

 必然的に、いくらヒットした車であろうと、10年もすれば姿を見なくなってきて、20年後も30年後もその辺りを走っているというようなことは殆どない。どんどんと新しい車が開発され、発売されているからに他ならない。

 私がこのランクルを所有し続けている理由は簡単だ。

 ただただ、貧乏でお金がなかったからだ。

 例えば、旧い車につきものの雨漏り。

 この車も多分に漏れず雨漏りが酷かったが、しばらくはそのままにしておいた。しかし錆が治ると言うことはなく、段々と穴が大きくなり、どうしようかなということになった。

 はじめに悩み始めた頃はまだインターネットも黎明期であり、板金塗装の情報も少なかった。まず材料の鉄板を何処で買ったらいいのか、そこから考えた。という経緯を振り返ってみると、やはり私はお金がなく、外注に出すことができないので、何とか自分でできないかを模索していたんだよな、という事がわかる。

 結果的には、オフィス家具のリサイクルショップで大きなスチール棚を買い、それを解体してもらって、材料の鉄板を入手した。板金などは適当で、サンダーで切り出した材料をボコボコ叩いて形に似せたが、当然とりあえずの物しかできなかった。接合は溶接がこれまたよくわからず、高い棒を使った溶接の機械を買ったものの金属の接合などはできなかったので、リベットでの接合をマスターした。塗装に関しては、横浜のとある塗料店のサイトを参考に、材料の入手と作業を行なった。このサイトは先日見ると閉鎖されてしまっていた。

 部品に関しては、この車は海外で販売された台数が多いことから、世界各地に私のようなオーナーがいる。ということから部品の流通もある程度はあり、この事も長期所有ができている要因の一つとなっている。

 今では窓ガラスの開閉もままならず、雨漏りがするので椅子にはビニールを被せ、雨が降ればワイパーモーターが壊れるのを恐れてワイパーを殆ど回さず、煙が出るのでアクセルを強く踏むこともできず、エアコンパワステパワーウィンドなどもなく、キーを回すにはコツが必要で、このカギもエンジンがかかっているのに抜けてしまうなど、普通の方からすればとんでもない車なのである。

 でも、こうして長い間の所有がようやく価値を生み出し、新しい職場の方とのコミュニケーションに役立っているなと思うと、懲りもせず40年近く所有してきてよかったなと思うのである。

 生まれつきの変わり者であるが故の、なせる技なのだろう。