義父が入院している病院から、しばらくの間連絡がなかった。
院内でコロナに感染したので、病棟が変わります、と言われたきり、12月分の請求書、当初入っていた一日1万円の差額ベッド代の請求も送られて来ない。
私とカミサンは、「きっとコロナに感染して、状態が悪いんだよ」などと、勝手に状況を想像していた。
しかしである。
ここ最近、病院から頻繁に連絡が来るようになってしまった。突然である。
まず、最大の懸案だったコロナは、簡単になおってしまったらしい。基礎疾患の塊で高齢者なのに、どうして重症化しないのか、全くもって不思議だ。
入院が長引いている理由は、透析関係で手こずっているからだった。義父は太っている割に血管が細く、透析をするためには、シャントと言われる血管の繋ぎ口のようなものを作る必要がある。
これを入院前に一度作ったのだが、結局は透析がはじまらずに使わなかった。今回大腿骨を骨折して入院し、これをきっかけに透析を開始するとの病院の勝手な判断(家族に同意は求められなかった)で、もう一度この入り口を作成したのだが、これもまた、上手く機能しなかったのだそう。
これがなければ、病院、医療施設のドル箱、税金の無駄使いである(一か月50万円)透析ができないので、今度は反対側の腕に再再度手術をして作成し、今様子を見ているところなのだという。現状は寝たきりだが、二回目の手術の後は、歩行器につかまって、何とか歩いていたらしい。
カミサンが言うには、何度かかかってきている電話の声もそこそこのレベルで、医者からも「ボケているわけでもなく、意識もとてもハッキリしているので」などと言われているらしい。
カミサンは、昨年末に病院から言われて、透析患者の医療費に関する手続きを役所で行い、昨年末の最終日、その控えを病院に提出してきた。
書類を受け取った担当者はコピーを取り、12月の最後の営業日にきちんと受け取ったのだが、今回病院からの電話で、この書類はどうなっているのか?と、問い合わせがあった。
そちらの言われた通り、年末に手続きをして、昨年中にコピーを窓口に提出してきた旨を伝えて電話を切ったのだが、もう一度電話がかかってきて、やはり確認できないので、こちらに持ってきて欲しい、とのことだった。
当然のことながら、カミサンは憤慨している。
私もかつては自動車関係の書類を扱う仕事で、いろいろと苦労した過去があるので、このような適当な管理状況は許せない。もっと事の事態を重く見て、対応するべきである。
病院からの電話は、かかってはくるものの、折り返しの連絡ができない。番号にかけても繋がらない仕組みになっている。これがまた、就業中は電話に出ることのできないカミサンに多大なストレスを与えている。昨日は就業時に二回、折り返し不可能な電話が来ていた。
三回目の電話では、看護師が義父に頼んだのか、義父から直接電話が来た。
カミサンは今、義父から電話があり、声を聞き喋ると、動悸がするようになってしまった、と言っている。それ程までに彼の存在は、例え離れた病院にいようとも彼女にストレスを与えているのだ。
私もカミサンも憤慨しきりだったが、ここで怒り立てた所で、結局は私達がそれ以上のストレスを抱えてしまうことになるので、もう忘れて、言われた通りにしよう、ということになった。
状況が改善しているのか、義父は義父でカミサンに、ヘアートニックと一万円を持ってきてくれとか言ってきた。寒い中車に乗って、駐車場も混み合う病院に行き、要望通りに無事届けても、相変わらずお礼の一言もない。
平和な生活から一転、週に三回も彼の為に病院に行くことになってしまったカミサンが可哀想になってしまった。
私は夫として、何があろうとも彼女を義父から守らねばならない。
病院側は決まりなのか、転院先の病院でリハビリをした後の事をしきりに聞いてくる。当初はお世話になっているケアマネと相談して決めるということで納得していたようだったのだが、これもまた話の流れが変わり、何度も「どこにするのか?」「検討はしているか」「本人と話はしているか」などなどと、カミサンに電話がかかってくるようになった。
カミサンはこの電話が嫌で、(電話の対応が面倒なので)「(転院先の病院でリハビリをした後の行き先は)自宅にしておいていいです」と言ってしまった。(脅迫にも似たやり方で言わされてしまった)
もちろん、さらさらその気はなく、転移先の病院に移った時点で、ケアマネに終の住処を探してもらう予定だ。
絶対にないだろうが、万が一彼が自宅に戻ってくるような事があれば、私達はもう、生きていくことができない。昨日私は、彼を殺してしまうかもしれないというような、恐ろしい考えに至ってしまった。絶対にこんな事はあってはならない。一緒に暮らしてはならないということだ。
真面目な人間を、犯罪者に陥れてしまう8050問題は、さまざまな形がある。現実は、当事者にしかわからない。
私達は引きこもりでも、精神疾患者でもないが、少しでもこの現実が伝わればと思う。