私がお世話になっている運送会社では、毎年この時期になると、綺麗にトラックを洗車して、県道沿いに並べるという慣習がある。
大型トレーラー、ユニック付き車、100t,75t,をはじめとする各種クレーン車、などなどがびしっと一列に並ぶ様子は壮観で、県道を走る車や通行者の目を惹くものがある。
社長はこれが広告なんだ、帰省や旅行でこの地区を訪れる人が、これを見て当社を気にかけてくれ、願わくば求人に応募があるとか、仕事のお話をいただけるとか、いい方向へと進む影の力なのだ、といつも言っている。確かにそれは一理あると思う。私もこちらへ来たときには「この会社すごいな」と、カミサンに言ったことが何度もあって、当時はまさかこの会社にお世話になるとは思ってもみなかった。
私は正式な社員ではないものの、勤務年数だけは増えていき、今や中堅のインチキ従業員になってしまった。
この車洗いと車並べ、実はそう簡単なものではない。
従業員総出で朝早くから取り組み、長いと3日位かかってようやく出来上がる。車を並べるという作業に紐付いて、構内の掃除や片付け、その他いろいろとやることがあるので、こんな感じの労力が必要となるのだ。
昨日帰社すると、仕事のない感じの人たちが集まって、リーダーの指示の元、ぼつぼつと洗車を開始していた。これは帰ってしまうわけにはいかないと、私のトラックも洗車して、その後は寒い中洗車を手伝った。
問題は今日の出社時間で、あまり段取りができていないと、朝の4時からの招集となる。今日は上手くできそうな感じなのか、場内もそこそこ片付いているからなのか、5時出社との指示が出た。
私は自分の仕事が今日まであったので、朝早くに出社早々、トラックに乗って会社を抜けた。仕事のない人は、朝の5時に出社して、洗車や片付けに取りかかる。
全てが終わると、会議室で今年を総括する会議が行われ、そこでボーナスが支給される。今までの慣例だと、飲み物や正月用の餅やカレンダー、それに加えてここ数年は地元の笹かまぼこなどが配られ、今年の仕事納めとなる。
でも、ここまでが長い。
今日は5時で、明日もおそらく5時の招集だろう。段取りが良ければ明日の夕方に会議がはじまるのだが、あれやこれやと作業をしていくにつれ、時間がずれ込んで、会議の開始が夜の7時とか8時とかになってしまう時もある。今までの中では、夜の12時を超えてしまった事が一度だけあるのだという。
そんなこんなの経緯を経ながら行われ、完成する毎年の車、トラック並べ。今年はサクッと終わらせて、早いところ冬休みにして欲しいなと、毎年思っている。
何事もそうだとは思うけれど、綺麗な物事の裏には、そこそこ大変な事柄が埋まっているものなのだ。