いつもの仕事がないので、ここ数日、とある現場の手伝いに行っている。

 風力発電の設備を作る現場だ。

 環境問題や電力問題の対策が待ったなしであることは、昨今の気候変動を見れば明らかで、環境に優しい発電方法をすぐにでも取り入れる必要があることは誰でも感じていると思う。

 でも、実際に、自分達の住んでいる地域の美しい山々に、風力発電の巨大な風車が立ち並ぶ事に関しては、未だに反対意見が多いのが現実だ。宮城と山形に跨がる蔵王連峰などは、大々的な計画が提案されたにも関わらず、反対の声が大きく、思ったように計画は進んでいない感じがする。

 そんな中、いち早く発電設備の巨大な風車群の建造を受け入れた地域があり、そこの手伝いに行ってきた。

 私がお世話になっている会社は運送会社で、メインの事業は重量物や長尺物の運搬である。ここでは、現場で活躍している各種クレーンの移動などを行っている。

 常用といって、このプロジェクト全体での運賃が決まっており、毎日の仕事量には変動がある。

 1日目はクレーンに付いているウエイトを運んだのだが、道が狭いのでなかなか大変だった。重量もかなりあるので、気を付けて運転しなければならない。場所によっては、例えば右に曲がらねばならない鋭角の所が、トレーラーでは狭くて曲がりきれないので、一旦曲がることのできる左に曲がってからバックし、数百メートル先にある道にバックで入っていき、方向転換する、なんて事もしなければならない。これをスイッチバックという。

 2日目は、同僚が積んでいた荷物を目的地に運ぶまでの誘導をした。荷物は風力発電の羽根を置く為の受け台で、幅3.19m の台車から、左右数十センチもはみ出ており、これもまたスイッチバックを経て目的地まで搬入した。

 現場を見ると、これは一大プロジェクトで、沢山の人が働いているのがわかる。私たちのトレーラーが通る土の道には、敷鉄板が敷かれている。膨大な量である。

 また、10基の風車も、建造される場所は山なので、場所によっては山を切り開いて道を作り、アスファルトの道路を作るところから始めなければならない。

 沢山の人が働いている事から、地元には経済効果もあるだろうし、将来的に発電される電力は、この地域でも消費されるのだろうから、電気代も安くなるのだと思う。

 このように書くと、いいことばかりのような気もするが、実際には地元住民の反対は思った以上に大きい。

 この地域も、賛成派の町長が建造を受け入れたものの、次の現在の町長は反対派になってしまったそうだ。
 
 実際に僅かではあるけれど生活を助けてもらった身としては、複雑な思いである。

 人間、知恵を絞って、この先もこの問題に取り組んで行かねばならないだろう。