トラック運転手の苦悩

 私の運転するトラックが信号無視をしたと通報されてしまった。

 帰庫し、終業の車両点検を終え、車庫にトラックを納めると、会社の担当者から電話がかかってきた。

 担当者は既に、私のドラレコをチェックしており、そのような状況のないことをわかってくれていた。

 私の会社のトラックにはほぼ全車両にドラレコ、ドライブレコーダーが装着されており、ほぼオンラインで映像を確認することができるようになっている。

 相手から言われた時間前後の映像を確認してくれた上での電話だった。

 相手は〇〇街道で何時頃に、と言ってきたとのことで、私もその時間の状況を思い出してみるのだけれど、相手に怖い思いをさせるような信号無視をした覚えはない。

 確かに大型車は、構造的に、積み荷との兼ね合いもあり、信号では停まることのできない状況で走行することもある。相手が右折してきて急ブレーキとなってしまえば、積み荷が崩れてしまうこともある。

 私の場合は、極力、はじめからそうならないように、信号の変わる時点では特に気を付けており、原則的には突っ込まないで、少しだけ速度を落として通過するように心がけている。

 しかし、このタイミングは信号によってまちまちなので、「どうしても」黄色から赤にかかってしまうような場合には、手を挙げたり、クラクションを軽く鳴らすなど、申し訳ない、という気持ちを出して通過するようにしている。

 今回、この道のこの時間は、渋滞が発生していた。

 スピードを出すことができる所はほんの数カ所で、私はいつも通り、穏やかに運転していたと思う。

 車庫の人が確認してくれたドラレコの映像もそうだったと思う。

 結局、管理者は、私を咎めることなく、この件を処理してくれた。

 結論としては、私に落ち度はないということになるのだけれど、やっぱり通報されてしまったとなれば、例え悪いことはしていないと言えど、いい気持ちはしない。

 この時間、この場所では、仮に何もなかったにせよ、通報が来てしまったという事実の裏には何かトリガーがあるはずであり、それがわからなければ、真の解決とはならないのだが、忙しい毎日において、なかなかどうして、このような問題を丁寧に解決して行くことは難しいという状況もある。

 世の中には高齢者や女性のドライバーが増えてきている。

 少しでも前との車間距離が詰まろうものなら怖がってしまうようだし、かといって前を開けて、安全速度で走るなら、乗用車はひょういひょいと当たり前のように割り込んでくる。

 冗談じゃなく、一日百台以上の車が、私のトラックの前に割り込んでくる。

 こちらは重量物を積載していることから、車間距離を保っているのに、そこが自分のスペースだと勘違いされ、割り込まれてしまう。

 この状況、慣れた、とはなかなかいい切れるものではなく、今でも私だって割り込まれ方によっては怒りたくなることがよくある。それを我慢しながら、ストレスを溜めながら、安全という絶対目標の元、毎日運行しているのである。

 今朝、私は悪くはないといいながらも、やはり処理をしてくれた車庫の担当者に、謝罪をし、さらに出勤してきた社長にも声をかけ、会社に迷惑をかけてしまい申し訳なかったと、これまた謝罪をした。

 現在の私には、この運転の仕事しかできることがないので、何とかこの世界で年金受給まで頑張って働かなければならない。

 これからも安全第一で、続けて行こうと思う。