公務員には退職後もいろいろな制度があることが、義父の死後にわかった。
今回、元公務員の義父が亡くなった訳だが、死亡後に家族が困ることのひとつに、役所関係の手続きがあるだろう。
保険、年金、その他諸々、これなら任せてくれというレベルで詳しい人はなかなかいないと思う。
カミサンは、葬儀の最中にスマホで調べ、市のとあるシステムに登録をしていた。この窓口では、あらかじめ登録しておくことで、死亡後の役所の様々な手続きが手際よく行えるという仕組み。義父は本当に様々な支援を行政から受けていたので、それを停止する手続きは煩雑を極めることが予想されていたし、彼女もそれを心配していた。
でも、この窓口があることによって、一度の来庁で全てが段取りよく終わるようだと、仕組みに感謝していたところだった。
これは一般市民に対して提供されている行政の仕組みだけれど、一方で、公務員にも保険や年金の手続きをしてくれる窓口があった。
カミサンと義父の同級生の話の中で、同級生がこの仕組みと、連絡先を教えてくれた。
同時に、「今まで掛けていたお金もあるようだから、聞いてみるといい」と教えてくれた。
掛けていたお金? 何だろう?
調べてみると、義父が所属していた組織には生命共済があった。
一口掛けると100万円、死亡時に保険金がおりる仕組みだった。これを一人5口まで掛けることができる。
彼が所属していた組織は、部署によっては常に命の危険を伴うような危険な仕事だったので、このような仕組みがあるのだろう。
掛け金は口座引き落としではなく、給料から引かれるようなので、この仕組みの存在はわからなかった。
果たして義父は、いくら掛けていたのだろうか?
同級生の言うところの「掛けていたお金…」とは、これなんだろうな、と思った。
普通の人なら、こういう仕組みにお金を掛けているから、自分が死んだらこのお金で葬式を出してもらえればいい、とかいう感じで、家族に対して申し送りでもあるのだろう。
豪勢な葬式は、このような資源から行われているのかもしれない。
私たちは心躍った。
100万なのか、500万なのか。
このお金が実際に入ってくるのだと思うと、今までの疲れも吹っ飛び、報われたような気がして、久しぶりにとてもいい気持ちになった。
ここで一度切ろうとも思ったのだけれど、ここはそんな勿体ぶった事をする場所でもないので、早急に結論をお伝えしようと思う。こんな風に書いているという事からも、読者の方には想像がつくと思う。
カミサンは、この公務員の手続きをするため、ここへ電話をした。
行政の仕組みと被る部分も多かったようだが、家の火災保険などは無事に彼女名義に移行することができた。
そして最後、もらえるお金はいくらなのか、いくら掛けていたのかを教えてもらおうと、その旨聞いてみたところ、「手続きは以上です」との返事が返ってきた。
「お金をいただけるような仕組みは、他にはありませんでしたか?」
と、カミサンが確認しても、返事は同じだった。
よくよく考えてみれば、義父がこんな備えをしていたとは、考えにくかった。
翌日、カミサンが同級生に確認してみると、義父は目の手術などで何度か医療共済からの支払いがあり、その事を随時、同級生に報告していたのだという。
これが、払い続けていた、掛け続けていたお金、という認識だったらしい。
そんなうまい話あるわけないよねと思う一方で、もしお金を払い込んでいてくれていたなら、残された家族は楽なのにな、普通の人ならこうするんだろうな、と、義父の自分しか考えていない自分勝手な生き方に、改めて憤りを感じてしまうのだった。
続く