忘年会

 かつては専属で仕事をしていた所で、今は担当が代わり、その人が休みになった時や私の仕事がないときにサブで入る、とある工場の倉庫がある。

 私はメインのメンバーではなく、顔を出すのは時々だけれど、出入り歴はそれなりに長いので、時々やって来るメンバーとして認めてもらっている。

 何人もの運転手が集まり、決められた量の荷物を運ぶ訳だけれど、倉庫側からはいろいろな指示が出るので、運転手といえどもある程度、皆とのコミュニケーション能力は必要になる。

 学校や職場と同じで、動きが自分勝手だったり、どうしても輪の中に溶け込めない運転手も一定数いる。そして、その運転手に対して文句をいつも言っている運転手も、だいたい決まっているのだがいる。

 人間社会、こればかりは仕方ない。トラックに乗れば一人きりの世界、菅原文太ばりの仕事だから楽かと思いきや、運転手も仕事によってはいろいろとある。

 先日、専属で入っている二人が、喫煙兼休憩の詰め所で話をしていた。私はタバコは吸わないけれど、みんなと顔を合わせて話をしていた方がいいと思っているので、いつもここにいるようにしている。

 聞けば、12月のとある土曜日に忘年会があるのだという。家が遠いから飲まないと言っているAさんがいる。隣の県に帰るので飲まないという、今はここにはいないCさんがいる。Aさんの家はCさんの帰り道沿いだから、ガソリン代位少し渡して、Aさん、帰りはCさんに送ってもらえばAさんだって飲めるじゃないか、せっかく久しぶりの忘年会なんだから、とAさんに言っているCさんがここにいる。

 Cさんにはリーダー的雰囲気がある。だけどAさんはあまり乗り気ではないようだった。何分か話をしていたが、私はメインのメンバーではないし、声もかけられていないのでだんまりを決め込んでいたが、詰め所は狭いのでやり取りが聞こえてしまった。

 万が一にでも私に振られたらどうしよう、なんて一瞬考えもしたが、見事にそれはなかった。寂しいやら安心したやら、忘年会など、運転の仕事をしてからはここ十年以上行っていないので、自分でも複雑な気持ちになった。

 昼休みに高校の同級生のグループLINEを見ると、忘年会のオファーが来ていた。今は便利なツールができていて、クリックじゃなくてタップすると、何時でもいい、6時以降希望、7時以降希望、参加しない、などの答えを選択して送ることができるようになっている。悪いけれどさすがにこの時期東京には行けないので、参加しない、にチェックを入れて送信した。

 若い頃、バブルの頃は、何かにつけて飲み会があった。会社の同期生、会社の所属先、会社の取引先、高校の同級生、その友達、などなど、それほど飲める訳でもないのに、結構あっちこっちへ出没していた。これが当たり前だと思っていた。

 今は寂しいかな、コロナ禍と不景気と世代間の考えの違いなどもあって、飲み会は減っているようだ。忘年会なんて言葉を聞いたのは、私も久しぶりのような気がする。

 屋久島での田舎暮らしでも経験したけれど、やはり酒が飲める飲めないに関わらず、人と人とのコミュニケーションは、人間生きていく上でとても大切である。忘年会などは大事な役割を果たしていると思う。

 積極的に参加したいとは思わないけれど、周囲に声が聞こえるのにも関わらず、1つも参加できないのは寂しいなと思う私がここにいるのであった。